リノベーションによる都市再生の潮流と、横浜の都市計画のこれから。

2015年5月に出版された「リノベーションの新潮流」(学芸出版社)。リノベーションの新潮流ではニューヨークやロンドン、マンチェスター、バルセロナ、アムステルダム、ベルリンと欧米を中心に、世界の諸都市におけるリノベーションによる都市空間の再生事例が紹介されている。この本を著者である、近代建築研究所 代表取締役の松永安光先生の吉祥寺オフィスにお話を伺ってきました。

 

私が聞きたかったのは、都市をリノベーションで再生するにあたって、議会や行政の役割はなにか、ということ。もっと具体的にいえば、マスタープランは要るか、という点である。戦後の長期にわたる米軍の接収から、横浜は一気に復興を遂げました。一方でその歪みもあって、大阪や名古屋、福岡、仙台といった他の政令市と比べて、都市の深みに横浜は欠けると私は感じています。

 

それは先の戦争で市内の中心部が焼け野原になってしまい、都市としての集積してきたものの多くを失ってしまった上に、接収が長引いたことで、時間をかけて都市を作るのが難しかったことにあります。いよいよこれから、という時にバブルは崩壊し、みなとみらいはこの20年、とても苦しんできました。ここへきてようやく、少しずつ開発が活発になっています。

 

横浜がこういう状況に置かれている中で、世界を代表する都市では投資マネーを集めて新規の再開発を行いつつ、一方で倉庫や港湾施設、ホテルやオフィスビルなど既存施設をリノベーションして、新たな賑わい拠点を形成しています。リノベーションによって生まれ変わった施設は観光拠点として、そして都市に住まう人たちの活動拠点として、従来にはなかった経済活動を生んでいます。私としては、横浜でも同じような動きを政策面からサポートできないか、ということを常々考えており、世界の諸都市では行政がどのような役割を果たしているのだろうか、というのが関心のポイントです。

 

実はちょうどインターネットでこの動画(なぜ私は「建築」をやらないか?「建築」をやるか?)を見たこともあって、非常に興味深い対談でした。建築家の藤村龍至さんと、嶋田洋平さんの対談で、一般社団法人HEAD研究会が企画したもの。リノベーションまちづくりで全国的に有名になりつつある嶋田さんは、行政が作ってきた、従来のマスタープランはもう要らないと言います。一方で藤村さんはマスタープランが成功してきたとはいえないが、それでも行政がまちづくりに一定の方向付けをする意味でマスタープランは必要という立場。

 

私の基本的な考え方は嶋田さんに近いのですが、一方でゲリラ的にリノベーションまちづくりを続けた先に、都市として魅力的な空間が面として広がるのだろうか、そこに観光や経済が規模を持ち得るのだろうか、とその点は疑問というか、葛藤があります。そこには一定程度、横浜市が行政として絵を描く必要があるのではないか、と。

 

だからこそ、ニューヨークをはじめ、世界諸都市がどう動いてきたのか、知りたいのです。松永先生にお会いをして、約2時間、色々とお話を頂きましたが、やはり、「マスタープランは要らないだろう」とのことでした。それはニューヨークが非常にわかりやすい、と。

 

ニューヨークは観光ガイドを見ても分かるように、マンハッタンひとつ見ても、スモールエリアが設定されて、そのスモールエリア毎に非常に特徴があるそうです。音楽、舞台、食等々。これからは行政が主導したというよりは、自然発生的にそういう人たちが集まったそう。

 

さて、そうなってくると横浜市がこれからできることは、リノベーションまちづくりを横浜の、特に中心部で、例えば、野毛や吉田町、山下町、相生町など関内周辺部や、岡野町、鶴屋町といった横浜駅周辺部などでどう推進していくか。リノベーションまちづくりの機運が生まれるようなインセンティブをいかに作っていくかが大事になります。そのインセンティブは補助金ではダメです。スクールの開催費は税金でもいいかもしれませんが、それ以外のリノベーションや客付け、テナントの運営など、それらには一切税金は投入せずに、リノベーションでまちづくりをやっていこう、そしてスモールエリアに面白い人たちは集まろうぜ、という機運をどう作っていくか、それが世界の諸都市に横浜が並べるかどうか、のポイントになっていくのでしょう。

 

もちろん、私は傍観者としてではなく、自ら主体者となって、この流れを作っていきたいと考えています。

your action is our future!〜最高にワクワクする横浜を、つくろう。